伝説の古代史へ今・・・
第五章 南郷村こぼれ話 伝説・ロマンが今、蘇る
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西郷隆盛第一話 西南の役大久保利通

〔士族の不満〕
 明治政府の新しい政治がととのっていくと、士族の多くは激しい不満を高めていった。

 1873(明治6)年には、仕事についていない士族の数が189万人もあった。武士の不満とは次のようなものであった。
  • それまで武士にあたえられた特別の権利が、すっかりなくなった。
  • 多くの武士が役人になったが、武士全部が、役人になるわけにもいかない。
  • 政府がすすめる農業や商業の仕事をやってみるが、なれないので失敗する。かえって「武士の商法」だと笑われてしまう。
  • 軍隊の仕事だけは士族のものだと思っていたが、徴兵令によって、望みがなくなった。
 こうして、新しい政治に不満をもつ武士たちは、江戸時代の方が良かったと思うようになった。こういう時に起きたのが、征韓論である。

〔征韓論〕
 明治のはじめ、政府は韓国に国どうしのまじわりをしたいと申しこんで、断られてしまった。この時、韓国の無礼をこらしめなければならないと、言い出すものがいた。1873(明治6)年になって、再び、この問題が起きてきた。政府のなかでも、西郷隆盛・江藤新平・副島種臣たちは、韓国をこらしめようと主張した。この意見を征韓論という。
 西郷たちは、韓国をせめることによって、士族の不満を外に向かって、はきださせようという気持ちもあった。

 しかし、岩倉具視・大久保利通たちは、征韓論に反対であった。岩倉は、ちょうど、ヨーロッパの国々を見て回って、帰ってきたばかりであった。そして、今の日本で、まず第一に必要なことは、産業を盛んにして国を強くすることであり、いま、朝鮮と戦争などするべきではないと主張した。
 征韓派と反対派は、たがいにゆづらず、激しい議論をつづけた。ついに岩倉たちの反対派が勝って、韓国をせめる戦争は起こせなかった。


西郷隆盛についての新事実!!
朝鮮への出兵を主張する西郷と内政の安定を主張する大久保利通との対立なのですが、不思議なことに西郷が征韓論を唱えたとする記録は残ってはいないのです。むしろ西郷は征韓を抑えて、全権使節の派遣をとなえていました。閣議では一度、派遣を決定し敗れた大久保は辞表を出しているのです。
ところが、その決定が覆り西郷は征韓論者にされてしまいました。大久保が敗れた3日後に総理大臣役の三条実美が病に倒れ、大久保とツーカーの岩倉具視が代理になり朝鮮への使節派遣はとりやめになります。わずかな間に力関係が完全に逆転してしまいます。そして天皇への上奏を書き換え西郷を征韓論者に仕立て上げ政界より追放したということです。
征韓論の討議
▲征韓論の討議:征韓論の賛成派と反対派の議論の様子を想像で描いたもの(東京都立中央図書館)

〔士族の反乱〕
 西郷はじめ、自分達の意見がとおらなかった人々は、政府の役人をやめて故郷に帰った。西郷達に大きな望みをかけていた士族たちは、政府に対して、ますます不満を強くした。そして、武力で政府を倒そうと考え、次々と反乱を起こした。
 1874(明治7)年佐賀に帰った江藤新平は、征韓論をとなえる士族たちを集めて兵をあげ、士族の反乱の口火をきった。
 1876年には、熊本に神風連の乱という反乱が起こり、つづいて福岡県の秋月の士族たちも、立ち上がった。また、山口県の萩でも不平士族をひきいた前原一誠が反乱を起こした。大久保利通が実権をにぎるようになった政府は、士族の反乱に、厳しい態度で望み、士族の反乱は、みな、政府軍にやぶられてしまった。


〔西南の役〕
 鹿児島県に帰った西郷のまわりには、沢山の士族が集まった。西郷は私学校を開いて、士族の青年を教育した。そのころ、鹿児島県では、政府の命令は、まったく行われなかった。地租改正もせず、士族はそれぞれ武器をたくわえて、昔のままのありさまであった。
 まるで、日本の中に、もう一つの国ができたようで、西郷は自然にその中心となっていった。
 西郷は、自分では武力で政府に反対しようとは、考えていなかった。しかし、政府が鹿児島のやり方をつぶそうとしてくると、じっとしていることはできなかった。

 ついに1877(明治10)年、薩摩の士族におしたてられた西郷は、政府を倒す戦いを始めた。西郷に率いられた士族たちは、いさましく戦って、いちじは熊本城までせめよせた。
 西郷軍は3万人、政府軍はその2倍の6万であった。激しい戦いのすえ、西郷軍は政府軍にうちやぶられ、とうとう、鹿児島までしりぞいてほろび、西郷は鹿児島の城山で自殺した。
 この戦いが西南の役で、士族たちは政府の軍隊を百姓の軍隊だといって、ばかにしていたが、その百姓の軍隊がみごとに士族の軍隊をうちやぶったのである。


田原坂の激戦
▲西南の役の田原坂の激戦:熊本の北にあり、西郷軍はここで政府軍を防ごうとしたが、戦いにやぶれ、退りぞいてしまった。(旧日比谷図書館)



第二話 西南の役と南郷村へ

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