作品紹介
父上の子の百姓にかへらなむ垂り穂の秋のここのふる郷
陸稲ゆれ粟の穂ゆれてふるさとの山ふかみ陽のおち沈む秋
初冬の山路さびしみ一夜ふた夜母待つ家に寝にかへるなり
ただ孫の顔の見たしと泣きたまふ母にわかれてかへり来にけり
うす靄のあやぎぬ巻けば美はしき初日浮かべて新汐寄する
黄に膿みて海より月の出でければ誰いふとなく浜に走れり
首山堡で脳を撃たれ病院に来て唄うたひつつ死にゆきにけり
徴発に出て遼陽の海原に沈む夕日をおろがみにけり